このサイトを見てくれている人たちの多くは、大学受験を念頭に置いた学生であろうと思います。かなり初歩的なところからになりますが、すこし丁寧に、大学入試について述べていきたいと思います。
大学に入るためには、入試を受けて合格しなければなりません。ものすごく当たり前のことですが、「入試に合格する」ためには、大学側に「この生徒を自分の手元で教えたい」と判断してもらわなければなりません。そのための判断基準はシンプルに「その生徒がこれから伸びるかどうか」です。そして、それを測るために「その生徒がこれまで自分をどう伸ばしてきたか」を指標にします。君たちも現在、中学入試や高校入試を経て、今の学習環境に身を置いているのではないかと思いますが、それはただ成績を計られていたのではなく、今の学校で学んでいく中で成長する資質があるかどうかを審査されて選ばれたわけです。
現在の受験社会の中では、「とにかく良い点を取れば良い」といった考え方になりがちで、本質的な部分がないがしろにされてしまっているように思われますね。得点は指標ですが、指標でしかありません。自分を伸ばすことができたというエビデンスの一つだと捉えてください。
さて、入試には大きく分けると、「推薦入試」と「一般入試」の二種類があります。「推薦入試」というのは、学生時代に特別な経験や能力を得た人が、それを武器に戦う入試です。「数学オリンピックで世界大会に行きました」とか、「インターハイで優勝しました」とかいう人のためのものですね。そんな見事な経歴があれば、そりゃ伸びそうだと判断してもらえそうですよね。逆に、推薦入試を「学力度外視で合格できる入試」と誤解している人がいますが、決してそんなことはありません。「学力以外にも自分の可能性を明確に示せる生徒」が受かる入試です。ということで、君たちの大半は「一般入試」で勝負することになるのではないでしょうか。
私立の大学はその限りではありませんが、国公立の一般入試を受ける上では二つの試験を受けることが必要となります。
「大学入学共通テスト」と「個別試験」(通称”二次試験”)です。簡単に言うと、「共通テスト」で5教科満遍なく高得点を取れるかどうか、を測り、二次試験で特定の科目(1から5科目)の難問を解けるかを測ります。受験生は共通テストを受けた後で、予備校等のデータベースで自分の位置づけを確認し、二次試験を受ける大学を決めて受験します。大学は、大学毎に設定した比率に応じて、共通テストの点数と二次試験の点数とを合算し、合否を判定するわけです。共通テストでしっかりと得点できていれば、持ち点が増えた上で、自信をもって二次試験に挑めますが、逆に思ったように得点できていなければ、持ち点も少ない中で、不安を抱えながら、二次試験での逆転に賭けねばなりません。例年、共通テスト(および後述のセンター試験)で85%以上、二次試験で60%以上、が超難関大学のボーダーラインでした。それが、2022年度の共通テストでは全国的に平均点が10%ほど下がってしまいました。今まででの常識が通用しない中(各予備校等のデータセンターが、本当に頭を抱えていました)で、受験生はかなり心細い勝負をしなければならないことになりました。
2022年度の共通テストの平均点が大きく下がった一番の理由は数学でした。長い文章を読まねばならない問題が出題されたりして、圧倒的に時間が足りなかったと聞いています。実は「共通テスト」というのも2021年度に一新された試験でして、それまでは「センター試験」という名前でした。「社会の変化を見据えて、時代に即した有能な人材を育成する」という目標を掲げて行われている大学入試制度改革のまっただ中に君たちはいます。それが果たして効果のあることなのかどうか、意見の分かれるところではありますが、思考力を測るためには文章読解力が必要、というような発想のもとで、(手前味噌ながら)国語力が問われるような問題が、数学を始め各科目で増えてきているようです。これから受験する君たちとしては、国語力(=思考力)を高めるとともに、計算力なども強化して、より速く正確に問題を解く力を身につけなければなりません。
一方、二次試験では、各大学毎に、欲しい生徒を選別するための個性的な(難しい)問題が出題されます。共通テストに向けて基礎力を身につけた上で、難問に対応するだけの応用力を身につけていかなければならないわけです。また、難関大学ほど、二次試験で課す科目数も多くなります。たとえば、東大と京大だけは、理系でも国語の試験が必須です(しかも両大学で、まるで問題の傾向が違います)。これは、きちんと言語能力も養った生徒をトップ大学は求めている、ということですね。
最後に、医学部医学科について補足しておきます。現在、国公立医学部医学科の入試では、共通テスト、二次試験、に加え、全大学「面接」が課せられています。点数化等々、詳細は明らかになっていませんが、「医師」という仕事に就くにふさわしい人物かどうか、実際に顔を見て話をして判断される、ということです。志望している人は、心構えや覚悟、医療倫理等、勉学以外にも鍛えなければならない点がたくさんあると考えておいて下さい。特に、面接が課せられる以上、その資料とするために、多くの大学で、事前に志望理由書を書いて送ることが求められます。これをきちんとしたものにしようとすると、私の経験上、数十時間かかります。一度で書けることはまずありませんし、教員とカウンセリングしながら、どんなことを書いていこうか延々悩むことになりますから。共通テスト後にこれを書こうとすると大切な時間が奪われてしまいます。できるだけ早くから書き始めておくことが戦略的に大切ですね。