大学入学共通テスト 現代文試作問題 B問題(2022発表)の解き方

ほいと
大学入試センターが、2025年度から変更される共通テストの試作問題を発表したよ。
大分問題の性質が変わってきているから、注意しなければならないね。

 

気をつけなければならない点としては、これはこれまでの「論理的文章」「文学的文章」「古文」「漢文」にプラスアルファされた5つめの問題として大3問に挿入される現代文の問題だということ。

これまで各50点だった他の配点が45点に圧縮されて、残った20点分がこの部分の配点となるね。センター側からきちんと名称がつけられていないので、断定するのはちょっと怖いけれど、一応この「新第三問」を「実用的文章(仮)」として話を進めるね。(この辺りの経緯については、近々『大学入試情報』の中で説明しようと思います)

 

問題はここから入手できるので、是非、一度解いてから続きを読んでください。

https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7ikou/r7mondai.html

 

試作問題はA問題とB問題の2種類が発表されたけど、今回はB問題の方を解説していきます。

 

 

 

ほいと
まずは全体の概要から。

作問者目線でこの問題を見ると、一番に驚いたのは「既存の文章をベースにしていない」ということ。

これはものすごい変化なんだよ。今まで現代文の作問する場合、入試の作問者でも、模試の作問者でも、問題集の作問者でも、図書館や本屋にこもって、切り取り箇所のある文章をとにかく探すところから仕事が始まってたんだ。そして、実はこれが一番大事で、大変な仕事だった。良い素材が見つかれば、ほとんど同時に良い問題が作成できることが確定するからね。でも、入試で使う素材には色々と制約があるからなかなか見つからない。本当に大変だったんだよ。

ところが、この「実用的文章(仮)」の問題なら、素材を探さなくても良くなっちゃうんだ。ベースになる文章を作問者が自分で勝手に書けばいいからね。

これで、出題者の側からしてみれば、作問の幅はものすごく広がったと言っていいんだけれど、逆に受験生としてみれば、文章の読解力よりも、背景知識の有無の方が問われるようになったと言えるね。

大学の先生が書いているような難しい文章を読み解く必要は、この問題に関してはないけれど(逆に第1問の論理的文章がこちらに偏りそうな気はする)、いろんな資料を用いて説明できるようなテーマについては、事前に体系的な知識を身につけておく方がいいだろうね。ほとんど社会科の内容になってしまう部分もあるだろうけど。今回の試作問題Aは「環境問題」について、Bは「言語論」に「ジェンダー論」を絡めたような出題だったよ。

 

 

 

ほいと
次に、各文章の説明をしよう。

扱わなければならないのは【レポート(作問者執筆)】、【資料Ⅰ(アンケートのグラフ)】、【資料Ⅱ(引用した文章)】、【資料Ⅲ(引用した文章)】の四つ。

上に書いたように、ベースになる【レポート】が作問者の手によるものだから、いくらでも問題を作る中で、いじることができるんだよ。

【資料Ⅰ】はよくあるタイプのグラフかな。【資料Ⅱ】【資料Ⅲ】は専門家の文章を引用しているけれど、あまり難しい文章ではなかったね。

 

 

 

 

ほいと
ではさっそく問1からみていこう!

問1は【資料Ⅰ】に関する問題なんだけれど、面白いのは【レポート】の脱文挿入になっているということ。脱文挿入の選択問題っていうのは、今までだったら、すでに完成されている素材文の一部から切り取る形で作ってたんだけれど、【レポート】自体を書いているのが作問者なんだから、キリ取り放題だよね。ちなみに、今までの脱文挿入問題って実は結構難しいことが多くって、二次試験では大阪大学が良く出題していたんだけれど、教えていても正答率が低いことが多かったんだ。気をつけてみていこうね。

具体的な解き方としては、とにかく丁寧に見ていくことが大切。「[ X ]に着目すると」とあって、その直後には、「女性らしいとされていた言葉づかいがあまり使われていなくて、逆に男性らしいとされる言葉づかいをしている女性も多い」と続いている。あくまで「使う」かどうかが争点なんだよ。だから、【資料Ⅰ】についても、一番下の「②次のようなことばづかいはしますか?」の棒グラフだけを見れば良いんだ。

ねびる
グラフや図の問題は、使わないものも多いから、取捨選択をするのが大切だよ!!

その上で、解釈が必要なんだけど、ちょっといやらしいところがあるかな。普通、慣れない人はグラフを見た時に「こっちが多い」とか「あっちが少ない」といった分かりやすい特徴に飛びつくよね。今回は、それをひっかけにして、「思ったより多い」「思ったより少ない」を選択肢の答えにしているところ。先の文章を要約すると、「女ことばを使わない女性が意外に多くて、男言葉を使う女性が意外に多い」ってことでしょ!?で、実際にグラフを見てみると、両方が3割程度になっているわけだよね。だから正解は②の選択肢になる。

グラフや数値っていうのは、実際に扱う段になるとすごく恣意的なものだ、っていうのがよく分かるはず。「にとどまり」とか「を超えている」なんて表現で、その辺りを表現しているんだろうね。そういう意味では良い問題だと思うよ。

 

 

 

ほいと
次に問2について。

これは少しいやらしい問題だと思うなぁ。しっかり設問文を読んでおく、というのは現代文の問題を解く上で、ものすごく大切なことなんだけれど、今回、

Ⓐ【資料Ⅱ】および【資料Ⅲ】の要約であること。

Ⓑ【レポート】の文脈上、[ Y ]に入る文章は、

①「言葉づかいの違いは性別によるとはかぎらない」という内容に「そして」でつながるものであること。

②「マンガやアニメ、小説などで役割語が非常に発達している」という文章が「たしかに」を用いて後に続くものであること。

の要件を全て満たしていなければならないんだ。

Ⓑ②があるから、アニメ等の語句のない選択②や選択肢④は最初に除外できるね。

⑤も「成長過程で理性によってイメージを変えられる」というのは明確にキズだから除外できる。

①と③で迷う中、正解は③なんだけど、①を外すのが難しいよね。①の文章自体にはキズがないから。

じゃあどうやって選べば良いのか、というとまずⒶを満たしていないんだ。【資料Ⅲ】の説明は書いてあるけど、【資料Ⅱ】の説明がないよね。

加えて、Ⓑ①も実は満たしてない。「性別」以外の役割誤についての言及がなされていないんだよ。逆に③の選択肢はⒶもⒷ①も満たしているでしょ!?

こうやって「消去法だけでは解けない問題」というのは受験生泣かせでね。大分正答率が落ちてくると思うなぁ。

 

 

 

ほいと
問3にいくよ。

これは今までの共通テスト、センター試験にもよくあった具体例を選ぶタイプの問題だね。

解き方のコツは、選択肢を横並びに見る前に、どんな選択肢を選んだら良いのか、抽象化してメモっておくこと。選択肢はまぎらわしく作っているから、先にそれを見てしまうと惑わされてしまうんだ。今回は分かりやすく「役割語」の例を考えろといっているわけだから、役割語っていうのがどういうものなのかを考えておくべきだね。【資料Ⅱ】が「定義」だから、そこから切り取ると、「特定のことばづかいが特定のキャラとリンクしている」例を挙げればいいはず。

選択肢①は「敬語」が「礼儀正しいキャラ」とリンクしてる。

選択肢②は「僕」や「俺」という一人称代名詞が「フィクションの登場人物のキャラ」とリンクしてる。

選択肢⑤は「だぜ」「さ」という文末語が「男らしいキャラ」とリンクしてる。

選択肢④だけが、どんな言葉づかいなのかを書いていないという点でひっかけなんだろうけれど、「ツッコミ」「天然」といったキャラの語調が頭に浮かぶでしょ!?

選択肢③は方言についての文章にはなっているけれど、「言葉を変えても地元の人には適わない」という真逆の内容になってしまっているからアウトだよね。

 

 

 

ほいと
そして、一番解きにくいのがこの問4。これは教員でも間違えそう。

問4は「補足すべき内容」を問うている問題だから、結局、与えられている文章の中には答えがないんだよ。だから、従来通りの本文に準拠した消去法では対応できない。消去法でも、なんとか消せそうなのが選択肢③だけ。「ござる」からの時代性はまぁ、まるで趣旨が違うと言えるだろうね。

でも、その他の選択肢はなかなか消すのが難しい。

とにかく、設問文をよく読むことが必須条件だね。「【レポート】の主張をより理解してもらうためには論拠が不十分だと気づき、補足しようと考えた」とある。だから、「【レポート】の主張」が何なのかをまずは考えないといけないね。すると、ちゃんと「言葉づかいへの自覚」と書いてあるんだ。「男女間の言葉づかいの違い」から始まって、最後は「言葉づかいについても自覚的でありたい」と締めくくってる。そうすると、基本的に文末語について【資料】で述べられていただけで、一人称代名詞については言及がなかったから、②は選んで良いことになる。また、役割語の使用に自覚的であらねば、という主旨から言えば、④の「個性を固定化してしまう」ことに対する危惧も選ぶべきだと判断できるだろうね。

ただ、①⑤⑥については、やっぱりあまりキズがないんだよ。正直、「論拠」という言葉づかいについては違和感はあるかな。ちょっと使い方がおかしい気もする。「【レポート】の主張を理解してもらうための論拠の不足」ではなく、「【レポート】の論拠の不足」と読んでしまうと、①⑤⑥はどれもあってもおかしくないように思えるね。でも、細かく見ていけば、①は「男女どちらの言葉づかいにもなる」と書いているわけで、「役割語による違い」の説明にはならない。あと、「語彙や語法“より”音声的な要素が重要」と書いてあるのも一応キズかな。「勝手に比較」パターンのキズだね。⑤は幼児教育限定の話になってしまっているから、【レポート】の主旨からはズレる。⑥もジェンダー論の立場から言えば、述べていること自体は全然おかしくないんだけれど、「役割語によって規定されているから自覚的になって注意しなければならない」という【レポート】の主旨とはまったく違う話になってしまうんだよね。

 

以上、B問題の解説でした。

 

 

ねびる
消去法で解けない問題がとても多いね。
ほいと
そうだね。今までの問題とはまったく違うと思った方が良い。
設問文をよく読んで、作問者の意図をしっかりつかむようにする努力が必要になるね。